遍路24日目

(内海、柳水大師、津島町、松尾峠、宇和島市、別格6番龍光院)

石像

 

遍路24日目
2008.3.28(金) 曇りのち晴れ

0635 旭屋
0730〜0735 柳水
0810〜0820 C460m 展望台
0930〜0945 休憩小屋
1055〜1130 津島 昼食
1205 松尾峠遍路道入り口
1235 松尾峠
1310 国道合流
1535〜1605 別格6番 龍光院
1615 オリエンタルホテル
   
今日の歩行距離
49,248歩
31.3km
総歩行距離
1072,150歩
682.9km

 

目眩

朝起きるとカミさんが蒼白な顔色をしている。
めまいがしている。

悪い記憶が甦って来た。
確か2年前であったろうか、めまいが治らずに医者を訪ね歩き結局札幌のめまい専門の病院で、「等位めまい症」と診断され通院・投薬の末、何とか治ったのだった。
もし、それであればお遍路どころではないのである。
本人も当然それを心配したようだが、あの時のめまいとは違うようだと言う。
とにかく安静にさせ今日は停滞にしようと考えていると、外の空気に触れた方が落ち着くし大丈夫だと思うと言うので様子を見ながら出発する事にした。

朝食は食べられないのでお願いして小さめのおにぎりを作ってもらいザックに入れた。

宿を出て川沿いの柏坂遍路道に入り、すぐに柳水大師、清水大師への登りへと入る。
カミさんの様子を見ながら超スローペースで歩く。
金剛杖より四本足の方が安定するだろうとストックを持たせる。
ゆっくり高度を上げて行く、少しふらつくときもあるが何とか歩けそう。

踏みしめて
ゆっくりで良いんだぞ!

 

気を紛らわそうと話をしながら歩く、幸い山道には野口雨情の短歌が幾つも木柱に刻まれており話題に事欠かない。

などなど・・・。
歌碑に出会う都度、立ち止まって読みその情景を思い浮かべる。
静かな二人だけの山道、一方は気遣い・思いやる、一方は寄りかかり・ゆだねる。
良い時間が流れてゆく。

高度330m地点が柳水、僅かだが水が流れ出ている。
ペットボトルに補充し、平坦になった道をゆっくり歩く。
道はブルが入ったのか幅広く整地され歩き易い。
後ろから来た作務衣姿の男性に道を譲る。

少し元気に柳水大師

カミさんの調子が徐々に戻って来たようだ、目に力が出てきたがまだいつもの生気は無い。
健康の有り難さはいつも感じる事だが、歩き遍路中は特に重大関心事だ。
足にしろ、何所にしろ不調の所があれば気になって満足に歩けない。
健康に感謝である。

 

ペースアップ

少し進むと広く木々が伐採された所があり、宇和海が一望できる。
やや霞んでいて残念だったが、視界が良ければ素晴らしい眺望だろう。

展望台宇和海を一望

下りに入って先ほどの男性に追いついた、悠然と歩き続けているので追い抜く訳にも行かず一緒に下る。
春欄のまさに咲かんとしている株を見つけしばし観察する。

カミさんが少しなら食べられそうな気がすると言うので、作ってもらったおにぎりとみかんを食べさせる。
おにぎりを概ね一つ食べられ一安心、眼にも光が戻ってきているようだ。

里へ降り、先の男性が托鉢でもするのか民家に立ち寄っている間に追い抜き、自分たちのペースで歩く。
国道56号線に合流した後も遍路道は国道に平行した旧道を通るため、気持ち良く話をしたり周囲の景色を見たりしながら歩けるのが嬉しい。

遍路道を気持ち良く歩く遍路道を行く

畑地小学校付近で小学生が正装して下校している、よく見ると親らしい人も、卒業式にしては遅いし、さりとて入学式には早い、どうしたのと聞くと先生方の離任式とか。
それにしても小学生は可愛いな〜、「おへんろさんが卒業式なのだって、終わったよね〜」と笑い転げながら追いかけてくる。
横を流れる小さな川に面白い形の橋が架かっていた。
多分簡易的に取り付けたり外したりできるようだった。

面白い橋面白い形の橋

 

お接待

津島の町には11時前に着いた。
遍路地図によれば、ここより先に食堂は無い。
中心部にある三好食堂に立ち寄ると、お弁当を作るのに大忙し状態。
食事が出来るか、恐る恐る聞くと、作業していたテーブル一つをあけてくれた。
カミさんはあっさりしたものなら食べられそうときつねうどんを私は野菜炒め定食をお願いした。

先生方の離任式用のお弁当を作りながらだから30分近くかかったが、とても好感の持てる人達であった。
ご馳走になり、お勘定を支払って出ようとすると「ゆっくりお話を聞かせて欲しかったのに、忙しくしていてすみません、途中でお腹の足しにして下さい」とお赤飯と巻き寿司のセットを二人分お接待して下さった。
商品をと戸惑ったが、遠慮なく頂きお礼を申し上げ店を出た、角を曲がるまで見送って下さった。
ありがとうございました。

 

松尾峠

津島の町を出ると30分で松尾トンネル、遍路道はトンネル入り口から山へと入って行く。
その入り口にユニークな遍路休憩小屋があった。
多くの人達のボランティアのお陰で遍路小屋は奇麗に整備されている。

ユニークな遍路小屋遍路小屋

トンネルまでは車の騒音が凄まじかったが、遍路道に入って数分もすると嘘のような静寂な世界、し〜んとした空気と沢を流れる水音が何とも清々しい。
標高差も100m位だから20分もあれば峠部分、気持ち良くのんびり歩いていれば立派な贅沢に太い木を使った遍路小屋が出て来て驚く。

 

贅沢な遍路小屋立派すぎる(?)遍路小屋

この松尾峠遍路道は静かで美しく良く整備もされた素晴らしい道、このような道を歩けカミさんの具合もすっかり良くなった感じである。
その後は大きな採石場のすぐ横を通りながら、ブルトーザーやダンプの大きな事や作業音の大きさに驚きながら再び国道に合流した。

 

龍光院

宇和島はかなり大きく立派な町、商船高校や病院の事故で名を知られる事になったがそれだけこの地方の中心都市と言えるのであろう。
郊外には今はやりの大型店が立ち並び盛況、道路も渋滞が続いている。
都会に出てくると、皆さん忙しく自分の生活に追われ挨拶をする余裕すらない人々ばかりと思いつつ、出合う人達に声をかけると意外にも挨拶を返してくれる人も多い。
中には「私も若い頃お参りしたのよ」とカミさんを捕まえ話をしたくて仕方のない雰囲気のおばあさんもおられた。

宇和島のお城を目安に地図を見ながら何とか別格の龍光院に着いたのは3時半過ぎ、やっと着いたと疲れた体に感動と安心の一時であった。
見上げるような108段の階段を上がり、こじんまりしているものの格調ある誰もいない境内で今日始めてのお参り、疲れのせいなのかお参りの間中、頭の中が空っぽと言うか真っ白な状態であった。

108段の階段を上がる108だんの階段

本堂や大師堂は決して大きくも派手でもないが、良く手入れがされ整然としていて気持ちが落ち着く。

本堂本堂

龍光院は高台にある為宇和島の市街を見渡す事が出来る。
それも気分を晴れ晴れとさせる一因なのかも知れない。

大師堂大師堂

納経所で納経をお願いすると奥様らしい人が「本当ならお茶でも差し上げなくてはいけないのですが・・・、これでお二人でお茶でもお飲み下さい。お参り下さって本当にご苦労様でした」とお金をポチ袋に入れてお接待して下さった。
別格や番外のお寺の遍路に対する扱いは本当に丁寧で優しいと感ずる。
人と人との本当のふれ合いがそこにはある。
当たり前の人と人との関係・関わりがなぜ札所には不足しているように見えるのだろう、もしかしたら行政の住民に対する扱いと似通っている部分があるのかも知れないと思った。

宇和島城龍光院から宇和島城を見る

今日の宿はJR宇和島駅近くのオリエンタルホテル。
ビジネスライクで気兼ねなく自分たちのペースで過ごせるのはホテルの魅力、民宿や旅館と上手く組み合わせて使っていきたいものだ。

 

 

旅館を出る頃は気分も悪く目が回って、今日一日歩き続ける事が出来ないのではないかと不安で一杯。
山道に入る頃は2本のストックがなければ、空中を舞っているようで地に足がついていない感じ、宿の方が作って下さったおにぎりを半分食べては歩き、飴は常に口の中。
主人に励まされながらやっと峠に立つことが出来た。
愛媛県だ!

津島の三好食堂でおそるおそる、うどんを食べてみる。
優しい味が体中にしみ渡って、やっと元気を取り戻した。
大自然の外気や草木、人の暖かさ、おうどんにまでも感謝の一日でした。

 

よろよろと ピンクの自転車 走りきし
      春の陽射しに せせらぎ唄う


 

 

 

 

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