雪山登山第2日目(三六九山荘→黒森林→雪山→三六九山荘) 2005.5.16(月) 晴れ



神々しく明ける日の出、三六九山荘から

5.16(月)
起床 0400
三六九山荘発 0455
黒森林(3440m) 0630
カール底(3600m) 0715
雪山山頂(3886m) 0815
雪山山頂 0950
カール底 1110
三六九山荘 1220
夕食 1700
就寝 1900

夜中に目を覚ますと外は物凄い豪雨、叩きつける雨音と雷、強風で小屋が軋んでいます。
「ああ!ダメか!」と気持も沈み、雨風の音が気になって寝つけません。

午前2時頃に雨の音がしなくなると共に意識が遠のき、次に目を覚ました時には「晴れているぞ!」の声。
起床の4時を待てずに、皆さんゴソゴソ起き出して、出発準備です。
外に出てみると周囲にガスがかかっているものの、頭上には星が出ています。
これならいけそうだ! 気力が湧き出してくるようです。

ワンさんも朝食の支度にとりかかっています。
朝食は中国お粥、トッピングのピーナッツ、支那竹2種類、山クラゲ、豆腐の甘辛煮です。


三六九山荘からの夜明け

予定の0500より早くに準備が整い、ガイドのシーさんを先頭に出発です。
今日は荷物も軽いし、天気も上々、皆さんの笑顔が嬉しい限りです。
山荘からは燦々と朝日を浴びながら草地の斜面を登り、森林地帯へ入って行きます。


朝日を浴びながら三六九山荘を出発

黒森林と呼ばれるエゾマツに似た松の森林に入りました。
立派な木々が鬱蒼と茂っていて、何となく屋久島を思い出させる風情がありました。


黒森林のガレ場と林

ガイドのシーさんによると、この森には鹿や熊も棲んでいて数年前には人が襲われた事もあるそうです。
林の中には雪山に入ってから初めて、水が岩から白糸の滝のように滴り落ちていたり、小沢が流れている場面に出合い、森の保水能力の高さが偲ぶことができました。


黒森林の中で

黒森林を抜けると、台湾圓柏と言う独特な木が多くなってきました。
盆栽好きの方でなくとも堪らない風情で、景色を切り取ってしまいたいほどのものでした。


独特な風情を見せる台湾圓柏の木

高度も3500mを越えました、まだ森林限界を超えていないようですが、圓柏の木の高さが段々低くなってきて岩に絡みつくように這うようになっていました。

0700過ぎに雪山のカール底に到着です。
思ったより、とても大きいカールに歓声が上がります。
残念ながらガスが出ていて、雪山の姿は隠されていました。


雪山のカール、正面左手に雪山の山頂がある筈

所々雪田も残っており、登山道も雪田を横切りながら山頂に続いています。
木々の種類も矮性のシャクナゲなどが中心となり、少しガレた道を一頑張りして高度をC'Kすると富士山を越えようとしています。
ここからは皆さん自力での最高高度更新です。

これまでガイドのシーさんのペースは私にとっては遅過ぎると感じていたのですが、丁度良いように思えてきました。
何となく身体に違和感があります。顔や身体が火照ったような感じはありませんが多分軽度の高山病だったのだと思います、息を吐くのを意識してしっかり呼吸するようにしながら登りました。
後で皆さんに聞くと、眠くなったと言う人や呼吸が苦しくなったと言う人も居ました。

やがて、ガイドのシーさんの「着いたよ〜」の声。
ガスの中から山頂に置かれた大きな石が目に飛び込んできました。
山頂です。皆さんの感激の歓声が渦巻くようでした。


雪山山頂、ガスが吹き上がってきて見晴らしは今一つ

お天気は晴れているのですが、ガスが次々と吹き上がってきて視界を閉ざします。
本来の計画では、山頂を越え反対側にある翠池まで行く予定でしたが、ガスで景色が見えなければ行っても仕方ないと取りやめ、ガスの晴れるのを待つ事にしました。
待つ間、持参してきた酸素ボンベの効果を確かめようと、順番に酸素を吸ってみます。持続性は疑問ですが、確かに呼吸が楽になると言うか、頭がハッキリすると言うか、効果を感じる事が出来ました。

風を避けつつ、軽食を食べ、今か今かと待っていると、段々ガスの濃度と頻度が薄くなってきているようです。
「頑張れ! 太陽!」と願わずには居られません。

願いが通じたのか、時折周囲が見えるようになってきました。


ガスが切れ、姿を現した中央山脈の南湖大山(左)と中央尖山

閉ざされていた東側の視界が広がり、中央山脈の山々が顔を覗かせ始めました。
ガイドのシーさんに説明してもらいますが、彼女の日本語はボキャブラリーが少ない上、単語の羅列以上のものでは無く、残念ながら良く分かりません。
こんな時頼りになるのがKMさんです。三年間通勤電車の中でラジオの中国語講座を欠かさず聞いて勉強してきたと言うだけあって、的確に通訳してもらえます。

中央山脈の南湖大山(3740m)がドッシリとした大きな姿を見せていて、何となく日高の十勝幌尻岳を思い出させる山容でした。
その右には鋭く尖った中央尖山が屹立していて登りたくなる魅力溢れた形をしていました。
ガイドに聞くとこの二山を巡ると11日が必要だそうです。

そんな話をしている内に、ガスは殆ど晴れてきました。
何と言うラッキーでしょう。
神様に感謝です。

何はともあれ、創部50周年の記念写真です。


快晴の雪山山頂で
左からKMさん、TBさん、私、IWさん、KUさん、FJさん

北隣の北陵角も切り立った姿を見せています。雪山山脈のもう一つの名峰「大覇尖山」は雪山からは見えないそうで期待していただけに少し残念でした。

カールも全容を見せ始めています。
日高の山のカールのようにカールらしい明瞭な姿ではありませんが、大きさは日高のカールの数倍はあろうかと思える大きさです。
良く見えるように北陵角とのコル付近まで降りて見てきました。


雪山のカール、日高のカールとは印象が違った

ふと気が付くと、IWさんの姿がありません。
カールを見に行った筈と探しますが見当たりません。
大声で呼んだり、笛を吹いたりしているうちに、「居た、あそこだ!」の声。
何と、北陵角の天辺に彼の姿があるではありませんか。

見守っていると、かなりの岩場のように見える所を軽快に降り始めました。
途中何度かルートを確認しているようでしたが、無事にコルへ降り立ち、雪山山頂へ戻ってきました。
ガイドは北陵角までは1時間、往復2時間は掛ると言っていたのですが、彼は40分で往復してきたのです。
先輩のTBさんの「全員でサポートし、隊として彼を北陵角へ立たせたのだ」の一言で、大笑いのうちに迎えられたのでした。


北陵角

1時間半以上、雪山山頂に止まり、充実感と大展望を堪能した私達は大満足して三六九山荘へ戻る事にしました。
山頂を去る時、皆さん異口同音に雪山と天の神様に感謝の気持を表します。
「有り難う!」

登る時にはガスで見えなかった山頂付近には木々と岩との不思議な光景が展開されていました。


圓柏が岩肌に絡みつくように延びている

カールの底で山のような荷物を持ったポーターと三人のカメラマン達に出合いました。
台湾では著名な写真家だそうで、私達に流ちょうな日本語で御自分が撮った雪山の写真集を見せてくれながら色々説明してくれました。
彼らは私達がガスの為諦めた、翠池に行って何日間か写真を撮るのだそうです。

来た道を引き返し、お昼過ぎには三六九山荘へ戻りました。
早速、ワンさんがお昼にとラーメンを作ってくれました。
私達の感覚では、ラーメンを言うより細いうどんという感じでしたが、実に美味しく、最初はお腹も空いていないので6人で4人分で十分と言いながら、追加で又作ってもらう有り様でした。


三六九山荘

午後は時間もたっぷり、昼寝をしたり、お喋りしたり、写真を撮りに散策したりしてゆっくりのんびり過ごしました。

今日の夕食は登頂記念にと早めにお願いし、山荘の庭で夕日を浴びながら、担ぎ上げてきた日本酒で乾杯です。
シーさんやワンさんも入って、楽しい賑やかな夕食となりました。


乾杯の準備にニコニコ顔の皆さん

この日の夕食のメニューは
豚肉の脂身の甘辛煮
キャベツの炒め物
インゲンと豚肉の炒め物
イカとタマネギの炒め物
葱の卵とじ
豚の塩漬け肉とニンニクの炒め物
ワカメとショウガの味噌汁
ご飯
の一汁六菜でした。

北側の品田山(3524m)が夕日を浴び、褶曲作用による山肌が何とも不思議な曲線を描いていました。


品田山の褶曲による山肌の不思議な曲線

夕食後ものんびり過し1900には就寝しましたが、山頂に立った喜びと興奮なのか、なかなか寝つけませんでした。
皆さんも同様だったらしく、夜中までゴソゴソ寝返りを打つ音がしていました。

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