第2日目 (曇り、ガス)
昨夜は余りにも早く就寝した為か、夜中に目が覚めてしまいました。
「キキィー」と言う小鳥とも思える鳴き声が聞こえますが、まだ真夜中、鳥が鳴く筈もありません。
しばらくすると鳴き声と共に走り回るような音も聞こえます。
テン場の一方は残雪、一方は笹藪、鼠達がテントの回りで大騒ぎをしていたようでした。
シュラフの中で足を動かしてみますが、違和感はありません。
「よーし!」と気分を高めながら、今日の予定を組み立て直します。
1967峰往復に五時間半、伏美岳まで3時間、下山に2時間半、合計11時間と計算、出来るだけ早く出発したい所です。
午前3時半、薄明るくなった所で起き出して簡単な朝食。
0400にテン場を後にしました。
赤らみ始めた空をバックに伏美岳、手前の最低コルがテン場 |
今日も全般に雲が多く、見通しも余り良くありません。
伏美岳が「早く戻っておいで」と言っているようでした。
ピパイロ岳への登りはかなりの急傾斜で昨日と同様、雪を繋ぎながら登って行きます。
今日は僅かな荷物しか持っていない為か足取りも快調です。
ピパイロ岳へはテン場から1時間20分で到着です。
ピパイロ岳山頂 |
ピパイロ岳は伏美岳から見ても分かるように屋根型をしていて、1番西にあるジャンクション・ピーク(JP)までかなりの距離があります。
岩場の快適な稜線歩きです。
ピパイロ岳の山頂稜線、正面はJP |
この稜線を歩いている時、1967峰の残雪を登っているSGさんの姿を見つける事が出来ました。
「SGさん、気をつけて行って下さい、俺も慎重にやるからね。」
JPを過ぎ、1967峰とのコル。そこにはSGさんが泊まったテント二張は張れるテン場がありました。
ここから1967峰までは一登りです。
山頂まで半分ほど登ったでしょうか、雲の中に入ってしまいました。
JPから1967峰を見る |
雪を繋ぎ、岩を幾つか乗り越すと待望の1967峰山頂です。
山頂と言っても標識も何もありません。
小さな石にピンクテープが奇麗に巻き付けられているだけでした。
雲の中で見通しも無く、本当にここが山頂なのか、疑心暗鬼です。
GPSはここだと言っていますが、雲が薄くなった時に見えた近くの小ピークにも登ってみます。
なにせ、手軽に来れる山ではないのですから、念には念を入れてです。
20分近くウロウロしている時、1967峰の西側に二張のテントがあるのを見つけました。多分、幌尻岳へ行った人達のものだろうと思いました。
帰りは忠実に来た道を引き返します。
途中、ミネズオウやキバナシャクナゲなどが美しく咲き誇っていました。
また何時か見られたら良いなと思っていた花にも出会う事が出来、大感激でした。
ミネズオウ |
雲の中から浮かぶように見える花達は可憐で心を和ませてくれます。
貴重な花々です。大事に大切にして行きたいものです。
ミネズオウの色の薄いもの |
時間との戦いで急ぐのですが、かわいい花達が咲いていると立ち止まって挨拶しないと可愛そうな感じです。
ついでに写真もとなり、益々時間が経って行きます。
キバナシャクナゲ |
良く分からない花にも出合いました。
ミヤマタネツケバナかとも思うのですが自信はありません。
後からイワウメだと教えられました。花びらが開いているのしか見た事が無かったので分からなかったようです。葉とか茎とかもっとしっかり覚えなくては・・・。
イワウメ |
雲が切れてきて、ピパイロ岳の家形の姿が再び見え出しました。
一路、テン場を目指します。
ピパイロ岳の家形の山容、これを登り返してテン場へ |
ピパイロ岳を登り返し、雪の急斜面を慎重に下って、テン場に帰ってきました。
概ね予定通りです。
テントを撤収しながら、心細くなった水を作り補給します。
ここからは再び重くなったザックを担ぎ、伏美岳までのアップダウンを越えながら登り返して行きます。
まだ10時、焦る事は無い。一歩一歩確実に歩けばいいのだ、そう自分自身に言い聞かせながら歩みを進めます。
幸い昨日のような怠さ、つらさはありません。
途中、雲が切れて伏美岳の姿を見上げた時も気にせず淡々と登って行けました。
伏美岳へ登り返して行く |
思いの外、楽に伏美岳山頂に着きました。
昨日の人で溢れていた賑やかさとはかけ離れた静かな誰も居ない山頂です。
周囲の山々が雲に覆われている中、隣の妙敷山だけが片側をガスに覆われながら姿を見せていました。
妙敷山 |
無事下山すれば、今回の山旅も終了です。
時間もお昼を過ぎた位、時間は掛かっても良い、慎重に降りようと心に決めて伏美岳を後にします。
30分に一度、直す膝のサポーターの作業にも慣れました。
膝への負担が大きくなり勝ちな下り、ゆっくり慎重に降りて行きます。
ツツジのトンネルに戻ってきました。
昨日もその美しさに感動したのに、今日も負けず劣らず感激です。
ツツジのトンネル |
やはり、衝撃が掛かったのでしょう、膝がおかしくなってきました。
庇いながら降りる事約2時間、やっと登山口へ戻ってきました。
「良く頑張った」、自分で自分に御褒美です。
伏美岳避難小屋の水場で身体を洗い、着替えをして、SGさんがいる筈の日高の道の駅に向かいます。
途中でSGさんから電話が入り、お互いの無事を確認です。
午後5時、道の駅に到着、SGさんは私が無事下山して安心したのでしょう、お風呂に入り一杯やって御機嫌です。
お互いの無事と健闘を賛え合い、お付き合い頂いたお礼と途中での計画変更をお許し願いました。
念願だった1967峰を訪れる事が出来、何とも言えない満足感です。
しかし、今回の山行でも足の痙攣と言うこれまで経験した事の無い事態に襲われました。
若い時に鍛えたと言っても、歳は歳。
十分なマージンと考えられる事態への対処を計算に入れて、行動して行かねばならないと感じる事が出来ました。
翌朝、この数年味わった事の無い、強烈な筋肉痛です。
「何時までも若くは無いのよ!」、カミさんから手厳しい一言。
「はい、わかっています !! 」