第三日目  2009.8.6(木)  快晴

 

化雲岳(1954m) 五色岳(1868m) 沼の原

 


 

沼の原

 

2009.8.6(木)
ヒサゴ沼避難小屋 0505
化雲岳 0635
五色岳 0730
C1500m 0915〜0940
沼の原 大沼 1010
沼の原入り口 1035
クチャンベツ 1140

快晴

ヒサゴ沼からは、トムラウシへ登って温泉へ降りる人、十勝まで縦走する人、天人峡に降りる人、旭岳へ向かう人、私たちのようにクチャンベツへ降りる人、皆さん夫々だがいずれにしても歩く距離はそれなりだ。

0330頃から起き始める気配、私も0400頃に起きだして朝焼けを期待する。
外は文句なしの快晴であるが、余りのお天気に朝焼けにはならないまま明るくなった。こればかりは仕方が無い。

手早く食事をして、パッキング。
0500には、出発準備も整った。
私の横の豪快いびきの男性二人連れは、慣れていないのか何をするにも手間取っている。少しは練習してくれば良いのに・・・と可哀想に思った。

 

後ろ髪

ヒサゴ沼から直接化雲岳に出るルートを選択し、水を補給してからゆっくり体を慣らしつつ登り返す。
かなり大きな雪渓の脇を登って行くと、ヒサゴ沼が小さく下に見えるようになって来た。

ヒサゴ沼ヒサゴ沼が小さく

斜面には花が所狭しと咲き誇っていて、眺めながら歩いていると疲れを感じる暇が無いほどだ。

花畑

化雲岳へ登り返す、四国から来たという単独の女性とお遍路話に花が咲く。
一人でアルプスや大雪を訪ねていて、大雪は登ってしまえば楽で楽しいから好きだと言う。
それはそうだが、女性一人でたいしたものだと思う。
きっと、自立した職業に就いている人なのだろうと勝手に思った。

化雲岳化雲岳

化雲岳の頂上からはいつもと変わらぬトムラウシや旭岳、白雲岳などの大景観が広がっている。
いつ見ても、心が洗われるような清々しい広がりである。

トムラ化雲岳から南の展望

それにしても化雲岳山頂の大岩はどうやって出来たのだろう?
あたりに大きな岩など無いし、不思議な感じがするのである。
それに大岩と言っても桁外れに大きい訳でもないのに、遠くからでも目立ち、化雲岳とすぐ分かるから不思議でもある。

化雲岳の大岩山頂

天人峡へ下る四国の女性と別れ、同じクチャンベツへ下ると言う私たちと同年輩のご夫婦と五色岳までの道をご一緒することに。
なにせ連日羆が出没している道である、少しでも大人数の方が心強い。
相前後して笛を吹きつつ、注意しながら進んで行く。
花の咲き終わったチングルマの穂が朝日を浴びて輝いてとても奇麗だ。

チングルマチングルマの穂

昨日楽しませてもらった花々を再び堪能しながら、往路を引き返す。
途中のハイマツ帯には、昨日とは違う場所に羆の掘り返しが出来ている。
糞も明らかに新しく、頻繁にやって来ているのが一目瞭然だ。
これで三日連続でこの付近を羆が徘徊していたことになる。
居着いてしまったら登山者に被害が出るかも知れない、心配だ。

「羆さん、貴方のテリトリーや権利を奪うつもりは有りませんが、お互いの共存の為、少しばかり登山道から離れた所に移動して頂けませんか?
その内、自分の為だけに世界はあると信じている人達が長ハジキなどと言う物騒なものを持ってやってきますよ。」

本当はもっとゆっくりこの快適なプロムナードを楽しみながら歩きたかったのだが、仕方が無い。
後ろ髪を引かれる思いで、足早に五色岳を目指した。

 

雲と山

五色岳に無事戻って来た。
ご一緒したご夫婦に心強かったとお礼を言い、此処からは各自のペースで歩くことに。

お天気は快晴、雲一つない。そのせいか少し霞んで見える。
でも、少し霞んでいる方が見方によっては風情がある。

北大雪
重畳たる山並みが連なる(北見富士方向)

日本でも有数のお花畑である五色ヶ原を時間をかけ味わいながらのんびり歩く。

カミさんが「花も山も素晴らしいけれど、カンカン照りのお天気より少し雲があった方が素敵で写真になるみたい」と一端のカメラマンのようなことを言う。

本当にそうなのだ、今年アンデスを訪れたときもご一緒したカメラマンの方々は雲がうまく掛かってくれることを期待していた。
雲によって動きが出るようにも感じるし、活きているという感じが出ると思う。

人生も同じなのかもしれない、何一つ苦労や悩みの無い人生は単調すぎて面白くも可笑しくもないだろう。
雲に覆われつつある山や雲を振り払っている山は戦っているようにも耐えているようにも見え、凛々しく逞しく感じるものだ。

そうだとすれば私たちの人生も満更でもないねとおしゃべりしつつ、五色ヶ原のお花畑を歩き下った。

 

熱中症?

下るに従って暑くなって来た。
C1500m付近の日陰で風の通る所で大休止。
早お昼を決め込み、小腹を満たす。
昨日までは美味しく食べられたパンが水と一緒でないと飲み込めない。
少し古くなったキュウリが美味しい。

五色岳までご一緒していたご夫婦がやって来た。
「エネルギー切れなんですよ」軽口をかわして先に行ってもらう。
沼の原の大沼が遠くに見える。疲れて来たのかもしれないな。

沼の原を見下ろす大沼

休憩地点から急坂を下り切ると、五色の水場。
先ほどのご夫婦が休んでいる。

沼の原への僅かな登り返しがキツく感じ、頭がボーをして来た。
カミさんも暑くてたまらないと言う。

沼の原の湖沼群に戻って来た。やはり美しい、でも暑い。
風が吹いてくれないかと期待するが、ソヨともしない。

沼の原沼の原と石狩連山

それでも清々しい景観が気分を立ち直らせてくれる。
何故、草原と池塘、それにアカエゾマツの組み合わせが、こんなに心をいやすのだろうか?

沼の原の湖沼沼の原

石狩岳方面への分岐を過ぎれば、沼の原は間もなく終わりだ。
見納めとなる神々の楽園を振り返り、遊ばせてもらったことに感謝の一礼。

「有り難うございました。とても楽しく有意義な三日間でした」。


遊ばせてもらったカムイミンタラに御礼

さあ、後はちょっと下ればクチャンベツ登山口と軽く考えていたが、それは甘かった。
往路では疲れもキツさも感じなかったのに、結構遠いのだ。
おまけに、こんな所登ったかい? と言いたくなるほどの急坂下り。
沢音が聞こえ始め沢に出たときは、なりふり構わずザックを降ろし頭から水をかぶって生き返った。

これってもしかしたら熱中症のなりかけだったのかも知れないな〜。
北国の涼しい生活に慣れ、寒さには強いが暑さには弱くなっている。
しかもこれまで天候不順で寒い位の陽気が続いていたのに、今日は一番の暑さとなったのだから・・・。

やっとのことで車に戻り着き、まだ冷えていたクーラーボックスのジュースやグレープフルーツを分け合って人心地がついた。

 

エピローグ

今回のカムイミンタラに遊んだ三日間、お天気にも恵まれ本当に楽しく気持ちよく過ごすことができた。
これまで山登り、山歩きと言えば、より厳しい山へ、未知の山へ、より困難なルートを心の中では目標にして来たと言っても過言ではない。

今回の山行は花好きのカミさんを喜ばしてやろうと思い立った計画だった。
実際にのんびりダラダラ大雪のカムイミンタラで遊んで思ったのは、「こういう山もありだな!」だった。

歯を食いしばって山頂を目指すのも良いことだし、やりがいもある。
日高の山などはまさにそのような覚悟を決めなくては訪れることも出来ない。

自分が優しくなれる、心が豊かになれる時間の過ごし方もある。
時には神々の楽園と言われるような場所で、心を洗い・心を磨くことも無駄ではなく、必要なのだとしみじみ感じた。

年に何回かは、こんな山旅も良いもんだ。

 

 

 

・花群れし大雪の原に木道は
          見え隠れしつ白く輝く

・再びの出合い誓いて返り見る
        白きチングルマ一斉にゆれる

 

 

 

 

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