中腹のお花畑から見る樽前山、左が東山山頂
6〜7月は何処も花の時期、樽前山も例外ではなく、毎週のように訪れても花たちが入れ替わり立ち代わり出迎えてくれるので飽きること無く楽しめる。
樽前山7合目ヒュッテから風不死岳へ向かう道は、お花畑の中を通る概ね平坦な歩きやすい道である。
今回はカミさんのリハビリ登山第二弾、お花畑を堪能しつつ山の中に身を置く心地良さをタップリと味わってもらい、これから長く掛かるだろうリハビリに頑張る気持ちを持ってもらうためのものである。ゆっくり楽しく過ごせるように、温かい飲み物、冷たい飲み物、お菓子にゼリー、お弁当と花辞典などを、加えて自分用に三脚とレンズ3本をザックに入れたら普段の日帰り山行よりずっと重くなってしまった。
樽前山に向かう支笏湖道路は新緑の真っ盛り、その新緑に朴(ホウ)の木の白く大きい花やミズキやアズキナシの白い花が目立ち、心が洗われるすばらしさだ。
土日は混む7合目ヒュッテの駐車場も平日の午前8時前だと空いていてガラガラだ。
管理人さんも余裕の表情で話し相手になってくれ、いろいろな情報を教えてくれる。「花を楽しみながらゆっくり行こう」用意を整えヒュッテを歩き出す。
直ぐの林にはナナカマドの花が盛りで、林床にはマイズルソウがたくさん咲いている。
ナナカマドの花
辺りが急に明るくなった、イソツツジの群落が現れ始めたのだ。
純白さが目に新鮮、「素晴らしいね〜、まさに旬!」
イソツツジ
花たちの早速のお出迎えにカミさんも嬉しそう。
何時もの調子でつい先を急ごうとするカミさんに「腰がギクッ!・グシャッ!となったら元も子もないよ。リハビリなんだから小幅でゆっくりゆっくり。誰にも迷惑を掛けるわけじゃないんだから・・・。」
間もなく林を抜け、左に樽前山・右に支笏湖・正面に風不死岳を見ながらの気持ちの良いプロムナードへ出た。
道の両脇にはウコンウツギ、イソツツジ、マルバシモツケが我が世の春とばかり咲き競っている。
花のプロムナード
所々に見えるミネヤナギ、花に付く白い毛虫の毛のような雌しべが目立ち、余り触りたくない気分である。
ミネヤナギ
後ろから歩いて来る人に道を譲りながら、のんびりゆったりと花と会話しつつ足を進める。
樽前に咲くマルバシモツケは白色の花が多く、見た目にはイソツツジと同化して見える。
その中からピンクの強い花を選んでみた。
マルバシモツケ
一つ一つは小さな花だがよく観ると五弁でなかなか可愛い、長く突き出る雄しべが花の表情を決定づけている感じがする。
たくさん咲いているウコンウツギを見ながらカミさんが「ウコンウツギの花の中にある斑点、薄い橙色のものから濃い赤色のものまでいろいろあるでしょう? なぜだか知っている?」
「色の変化が色々あるのは知っているけど・・・、理由があるの?」
「あれは受粉が終わってなくて虫たちに来て欲しい花は薄い色、受粉が終わってもう結構という花は色が濃くなるのだそうよ。」
「へ〜、そうなの。そう言えば受粉が終わるとしぼんでしまったり落ちてしまう花も多いと言うし、繁殖のためというのは判る気がするな。それに引き換え、繁殖のためと言うより楽しみのためにする人間は生物界の異端児かもな?」
「バカ・・・!」
受粉前(?)のウコンウツギの花
平坦なプロムナードも終わりに近くなってきた頃、少なくとも私たちはこれまで樽前で見たことのない花が咲いているのを見つけた。
ハクサンチドリである。
樽前山では初めて見たハクサンチドリ
支笏湖周辺の山では紋別岳、イチャンコッペ山、風不死岳、恵庭岳では何回も見ているが、樽前山では初めてである。
樽前山には昔は咲いていたと聞いたことがあるが、最近は情報として聞くことも無かった。
もしかしたら鳥が運んできたか、靴底に種がついて運ばれてきたのかも知れない。
いづれにしても、一時のコマクサのようにせっかく樽前山が気に入り定着したのに、元来あった植生ではないと引き抜かれることがないよう祈りたい。
樽前山中腹のお花畑を横切り、不風死岳との分岐へ通じる岩尾根に差し掛かった。
普段なら別に意識するほどの斜度でもないが、リハビリ中のカミさんには腰に負担がかかるまだ心配な傾斜でもある。そこで岩尾根には登らず楓沢方向に少し外れ、登山道から見えない花畑の中に案内し、吟行と洒落込むことにした。
「本物の感動の中でないと、短歌も嘘っぽくなるのよ・・・」と嘆いていたカミさんへのプレゼントである。お花畑を歩きまわったり、雄大な景観の中で深呼吸したり、ノートを広げたりしているカミさんを一人にし、私はレンズを変えながら撮影三昧。
この付近からイワヒゲが目立ち始める。
可憐かつ清楚、私の好きな花の一つだ。
イワヒゲ
お天気も良くなり青空が広がり始め、暑くなってきた。
氷を入れてもってきたスポーツドリンクが美味しいと感じる。
岩と青空を従えたイソツツジを見つけ、写真家気取りで一枚だ。
空と岩髭
目を北に転ずれば、微かに覗く支笏湖と紋別岳が佇んでいる。
心やすらぐ静な風景である。
花と空と紋別岳
「持ってきたからと言って、こんなに食べたら太っちゃうかな?」と言いつつ、沢山のお菓子に手を伸ばし、コーヒーやドリンクで喉を癒す。
火山灰の土によく観ると何種類ものアリが大きな巣を作って盛んに活動している。
ビスケットの破片を早速見つけて巣に運ぶだけじゃなく、ズボンやシャツにも登ってくる。
堪らず退散だ。
気宇壮大な景観の中で
2時間近くお花畑の中でゆっくりし、今日はこれ以上登らず往路をもう一度歩きながら花を楽しんで戻ることにした。
何組かのパーチィとすれ違うたびに「お早いですね〜、もう風不死岳からお帰りですか?」などと声をかけられる。
「いえ、お花を観てきただけで・・・」と言うと、途端に小馬鹿にしたような態度に変わる人もいるから面白い。太陽が容赦なく照りつけ、暑い。この所気温が低かったせいか体にこたえ、気持ちが萎える。
北国の生活に慣れきった体では、本州以南の夏は乗り切れないかも知れないと本心から思う。
汗を拭きながら、イソツツジをそしてマルバシモツケをUPで撮ってみた。
イソツツジ
どちらも同じように雄しべが長く突き出た様子が印象的であるが、何故かイソツツジのほうが清楚に映る。
マルバシモツケ
色のせいなのか、形のせいなのか、私の感じ方のせいなのか、よく判らないのだが・・・。
往路では気付かなかったハナヒリノキやオオバスノキ、クロウスゴの木が結構あり、余り目立たない花を咲かせていた。
オオバスノキ
そして雪解け水や雨水の流れる所なのだろうか、今は乾燥しているところにモウセンゴケがたくさん生えていた。
モウセンゴケ
ヒュッテの駐車場に戻ってくるといつの間にか駐車場は満杯になっている。
平日でも気楽に訪れられ、花も景色も楽しめる樽前山はやはり人気の山なのだ。今回はカミさんのリハビリが目的の山行であったが、ゆっくり歩くと何気なく見過ごしてきた木や花も、しっかり観察出来るのを実感することができた。
そういう意味でも今回のような山行も楽しいもの、ハードな山行ばかりでなくいろいろな山行を計画し味わっていきたいと思った。
まだ時間が早いので、支笏湖の休暇村の林でシウリザクラを見て帰ることにした。
ここには何本もの大木があるのだ。
少し遅いかと思ったが、まだ見れる花もありすべりこみセーフであった。
シウリザクラの花
また林の中の草地には笹葉銀蘭(ササバギンラン)も咲いていて、ラッキーだった。
ササバギンラン(笹葉銀蘭)
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