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観音岳
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登山口である豊似湖へ向かう途中、庶野の海岸に出ると海も大気も全てが赤く染まりだした。
素晴らしい日の出、ご来光である。
思わず車を停め、手を合わせ頭を垂れる。
ご来光
国道336号線を目黒の猿留川を越えた「豊似湖」の標識で左折、概ね猿留川に沿いながら数カ所ある看板標識に従って豊似湖の駐車場へ。
豊似湖へ2Km位の所から僅かに積雪状態に、昨日のルチシ山同様2日前に降ったようだ。
準備を整え出発する、登山口には以前からあるユニークな案内看板が塗装し直されて歓迎してくれている。
登山口の案内看板
氷河によって削られ出来た豊似湖はゴツゴツした岩と苔そして倒木に覆われた荒々しい地形の中にひっそり静寂に包まれて佇んでいた。
小鳥のさえずりしか聞こえない、静かな静かな別世界に迷い込んだようである。
静寂に包まれた豊似湖 正面がハートの尻尾部分
湖畔に作られた道を時計回りに半周していく、途中に猿留山道へ上る道が新設されていた。
ハート型の頂点から尾根へと上がり猿留山道へ合流する、積雪は5cmほどだが狭く切れている所もあるので要注意だ。
合流した猿留山道はゆるやかにうねうねと続いている、昔の人はどんな思いで歩いたのだろう。
馬頭観音菩薩が安置された沼見峠、海を通る船の、丘を行く人々の安全を願って安置された祈りの場であったはずだが今は菩薩様と石碑があるのみだ。
沼見峠にある馬頭観音菩薩と石碑
4年前は峠から豊似湖が見下ろせたと記憶していたが、木々の枝が邪魔をして湖の形をしっかり見ることはできなくなっている。
ハートの型を見るのを楽しみにしていたカミさんは、ちょっぴり残念そう。
沼見峠から豊似湖を見る、残念ながら半分近くが枝で隠れている
沼見峠からは尾根沿いに登っていく。
前回は12月に訪れているのだが、今回より雪はずっと少なかった。
そのせいか前回は簡単に辿れた鹿道や踏跡が、雪の重さで傾いたり倒れたりした笹で隠され判別が難しくなっている。
小さな笹だから大したことはないと適当に進むが、背が高く濃い笹に出会うと苦戦する。
C680mPを目指して行くが少し北側に外れ、奥山半僧坊の祠の真後ろに出てしまう。
馬頭観音菩薩様や奥山半僧坊様に平素の無信心を見破られ、通行の安全と安寧を守っては頂けなかったのかもしれないと反省だ。C680mPからは目指す観音岳がC830mPと共に姿を表している。
C680mPから山頂(奥)を望む、ルートは???
半僧坊様に手を合わせ、しばし休憩。
長靴を固定していたテープを締め直したり、チョコを食べたりしながら、次のC830mPへのルートに見当をつける。
半僧坊さんの石祠をちょっとお借りして
C830mPへのやや急な斜面は笹が濃く背が高い所が多い、踏跡を辿っていたが見失い適当に笹を漕いで登っていく。
雪の深い所もあり、かなり苦戦。
私は藪や笹は苦手で嫌いだが、カミさんは慣れていないのも加わってズリ落ちたり笹に足を取られたり可哀想。
笹の薄い所を選んだつもりなのだが、どうも上手くいかない。苦闘すること約30分、どうやらこうやらC830mPに辿り着いた。
「お疲れ様!」
C830mPに辿り着いて
大変だったのはここまで。
C830mPから山頂までは尾根も狭くなり、ルートは限られるので踏み跡を外すことも無く、比較的スムースに山頂へ向かう。
観音岳の狭い山頂にやってきたカミさん、豊似岳を見ながら「あそこまで行くの〜?」
何の標識もないけれど、ここが目指してきた観音岳だと判ると心底嬉しそう。さっそく荷物を下ろして大休憩。
ここからも襟裳岬がしっかり見え、印象的。
昨日のルチシ山からは襟裳岬を正面からだったが、観音岳からは斜め横からの襟裳岬である。
昨日のルチシ山からとは少し違って見える襟裳岬
稜線通しになるC1088mPと豊似岳が一際大きく立派に見える。
C1088mP(正面)と豊似岳(中央右)
もう8年も前になるが、追分峠の肉牛牧場からC1088mP〜豊似岳〜オキシマップ山〜牧場と周回した時のことを思い出した。
あの時、豊似岳から観音岳を見て鋭い格好の良い山だと思ったのだった。
豊似岳
風は弱く、日差しもあるのだが、ジッとしていると寒いぐらい。
山頂付近の積雪は約15cmほど。
温かい飲み物で体を温め、パンや林檎でお腹を満たす。
苦戦の痕を示す、ズボンや長靴の雪
日高主稜線の山々はどんよりした雲に覆われながらも、その姿を見せている。
どれもが真っ白に雪と氷に覆われ、私達を拒絶している姿である。
楽古岳(中央)と十勝岳(左)
次第に鉛色の雲が空を覆うようになり、気分も下山時。
観音岳の狭い山頂から景観をもう一度見渡して、ザックを背負う。
下山は笹の斜面を降りるだけと簡単に思っていたが、案に相違して意外と大変だった。
笹と雪で滑るは、罠のようになった笹に足を取られ転ぶは、雪穴に嵌るは、と散々の体。
奥山半僧坊の祠に戻ってきた時は二人とも雪だるま状態だった。大変だったねと自分の惨めな姿に大笑いしながら、沼見峠を経て豊似湖へ降りてきた。
帰りは湖の西側を戻ろうとするが、道が水没して無い。
仕方なく水際を歩いたり、岩を伝ったりしながら戻った。そして湖から駐車場へ戻る途中、カミさんが急に立ち止まった。
何事? 指差す方を見ると岩穴からナッキーことナキウサギが顔を出している。
冬支度なのか、丸々とふくらんで可愛いこと。
ナキウサギが姿を見せてくれた
鹿道や踏跡を利用して、この時期でも簡単に登れる山として訪れたのに、予想外の雪で苦戦を強いられてしまった観音岳。
でも苦しい思いだけでなく、最後にナッキーの可愛らいい姿を見られ良い印象も持つことが出来たのはラッキーだった。下山後、帰宅すべく三ツ石付近まで戻ったら日高の山達が「また来いよ〜」と見送ってくれた。
見送ってくれたのか、日高主稜線の山々
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