穏やかな好天の樽前山山頂
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樽前山
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道道樽前錦岡線は例年12月からゴールデンウィークまで冬季閉鎖となる。
従って夏場は車で30分も掛からない7合目ヒュッテまで車道を2時間掛けて歩かねばならない。
仲間やパートナーと一緒ならお喋りなどで気を紛らわすこともできるが、一人では孤独・単調さと戦わねばならないのだ。森の中の些細な出来事に目を配り、小さな変化を見つけて気を紛らわす。
木々や雪面の織りなす陰影、動物たちの足跡、枯れ尾花、カーブミラーに映るショボくれた我が姿などなど・・・。
明るい朝の光が生み出す森の陰影・表情
約1時間で5合目ゲート、有り難いのは今年は雪が少なく道路の積雪は精々3・40cmでヒュッテの管理人さんがスノーモービルで道を圧雪してくれ、歩く人も多いのでツボ足で全く問題ほどになっていることだ。
お陰で私は7合目ヒュッテまでツボ足で歩き、ずいぶんと楽をさせてもらった。ヒュッテが近づいてくるに従って木々に邪魔され見えなかった樽前山が大きくハッキリ姿を見せるようになる。
青空に優美な姿が映えている。
歩きやすくなっていた道と樽前山
やっと7合目ヒュッテに到着、やれやれとザックを下ろし一休み。
やはり雪は例年の比して相当少ない、1m以上少ないのではないかな?
管理人さんは下山しているようで不在だ。すでに時間は11時、小腹を満たしながら山頂までの足回りをどうするか考える。
お天気は大丈夫そうだが、油断は禁物。
昨年も一昨年もここまでは晴れていたのに、8・9合目から吹かれて大苦戦したのだから。
7合目ヒュッテ、今年は雪が少ない
人の声が聞こえたと思ったら、若い男女3人パーティが下山してきた。
挨拶を交わし話を聞くと、昨晩は山頂でテント泊したとか。
「寒かったけど風がなかったからよく眠れました」と元気なものだ。山頂部の雪の状態を聞くと比較的柔らかいとのこと。
ヒュッテから直登コースを取るならアイゼンは必須だろうが夏道沿いのルートならスノーシューで大丈夫と判断、彼らと別れスノーシューを履きヒュッテを出発した。
夏道沿いに登っていくと8合目過ぎから斜度が強まり、トラバース気味に斜上していく。
雪はやや硬くなってきたがスノーシューで全く問題ないし、見る限り斜面は凍りついてはいないようだ。
樽前山の大斜面、クラスト気味だが凍てついてはいない。
次第に斜度がきつくなって左側はかなりの傾斜で落ちている、滑ったら止まらないかもという思いも・・・少々怖い。
アイゼンとピッケルに変えようか、どうするか逡巡する。
振り返ると、支笏湖と紋別岳が見守っていてくれるように見えている。
8合目付近から振り返る支笏湖と紋別岳
外輪山の稜線までトラバースしながらの斜上はかなり長い、夏道から外れ大きく右へジグを切ると雪面への食い込みもしっかりして不安はなくなった。
スノーシューのまま、大きめにジグを2・3回切りながら登ると、山頂の一角に飛び出した。問題なく山頂へ着いたけれど、やはりここは慎重を期してアイゼンに履き替えた方が安全だし良かったと思う、反省だ!
晴れて風も弱い冬の樽前山は3年ぶりだ、視界も良い。
盛大にエビの尻尾を付けている山頂標識にタッチし、ザックを下ろす。
雪化粧し白と黒のコントラストが映える溶岩ドームに目を惹きつけられる。
山頂からの溶岩ドーム、左は西山
2/8に風不死岳から眺めた時には無風で真っ直ぐ上に3本噴煙が立ち上っていた、今日も弱い風にたなびきながら立ち上る噴気の量は多い。
溶岩ドームから少し苫小牧よりに離れた所からも盛んに噴煙が出ている。
火山活動が活発化しているのだろうか?羊蹄山が良く見えて美しい。さすが蝦夷富士と呼ばれるだけの価値はある。
火口原と支笏湖の向こうに、秀麗な羊蹄山と尻別岳が
視界は透き通ったように素晴らしく、冬晴れの大景観が広がり独り占めしているのが申し訳ないほどだ。
苫小牧市街地も良く見え、その彼方には日高山脈が横たわっている。
苫小牧市街地と襟裳に続く海岸線、そして日高山脈
何時もは風と寒さでそそくさと逃げ帰るのが常の冬の樽前山山頂、この日は風も弱く長居も大丈夫。
山頂標識のエビの尻尾とロープにバームクーヘンのように巻き付いた氷が、冬らしい表情を見せている。
静かな山頂
それでも20分も滞在していると寒くなってきた。
しかしこんなに穏やかな山頂は滅多にあるものではない。
動けば暖かくなるだろうと、少し外輪山を散策してみることに。
樽前神社奥の院が祀ってある方へ行ってみる。
気持ちはあっても、風と寒さに負け、気力をなくし逃げ帰えるのが常の外輪山の稜線だ。
外輪山の一部 左に白老の海岸線と太平洋
少し行ったところから溶岩ドームを見ると、噴気が激しく吹き出し大変な迫力だ。
ズームした画像をさらにトリミングしてみた。迫力が伝わるだろうか?
激しく噴気を吹き出す溶岩ドーム
雪を被るとドームの溶岩の激しい起伏が改めてよく分かる。
起伏の激しい山脈を見ているよう
夏場の火口原は溶岩で真っ黒だが、今は広大な白い大地。
見慣れない姿に目が戸惑うほど新鮮だ。
溶岩ドームと火口原
小1時間、外輪山での散策を楽しんで下山に移る。
外輪山出合いからしばらくは右斜面のトラバース、少しの距離だが一歩一歩慎重に。時間は午後2時近く、気温が低下し始めたのか雪面は少し硬くなり光りだしている。
スノーシューの歯を蹴りこみ食い込ませ、一方の手にはストック、もう一方にはピッケルだ。
凍り始めた樽前山の大斜面
慎重にトラバースし、8合目付近から雪が柔らかくなり支笏湖や風不死岳が見え出してホッとひと安心。
8合目付近から風不死岳を見る
7合目ヒュッテに戻っても管理人さんは不在のまま、一休みして道路をひたすら下る。
敗退したり寒さにやられたり風に吹かれたりで敗残兵のようにすごすご下ることが多い道だが、今日はお天気にも恵まれ迫力ある溶岩ドームの表情なども見ることが出来、気持ち晴れ晴れまだまだ元気。
鼻歌を歌いながらゲートへと足を進めた。素晴らしい山行をプレゼントしてくれた樽前山、ありがとう!