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期待
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山小屋 芽室岳
芽室岳は登山口から片道5.7Km、やや長いがそれだけ斜度はゆるい。
登山口で準備を整える、風があり気温が低いことも想定し寒さ対策は念入りだ。丸木橋で渡る小屋横の沢は紅葉に彩られ、朝の光に清々しい。
清々しい沢を渡って
道は基本的に樹林帯の笹斜面に付けられた刈分道。
記憶では綺麗に刈り払われていた道と覚えていたが、結構笹が濃い。
しばらく笹刈が行われていないのかもしれないな。
こんな笹の刈分道が続く。
カミさんの体調も良いようでおしゃべりしながら淡々と登っていく。
やや残念なのは樹林帯で視界が得られないこと。
夏なら花が慰めてくれるのだが、今の時期は無理というものだ。標高1200mから1350m位で一旦傾斜は緩み、ダケカンバ越しに芽室岳山頂部と西峰が垣間見えるようになる、一服するには丁度よい。
ようやく見えた芽室岳山頂部
標高1350mから稜線目指して北尾根を一気に登っていく。
数日前に降ったのか、登るにつれ雪が出始め日陰部分は凍っている。
良いお天気に気持ちも晴れ晴れ
まさか雪道になるとは思いもせず、履いてきたソールの磨り減ったトレランシューズは心もとない。
カミさんの美瑛岳でダメになった靴は、新調したから大丈夫。
慎重に足を置き、ストックで確保しながら登っていく。枝越しに北側の日勝峠方向の山々が並んでいる姿が凛々しい。
日勝峠方向に連なる山々
雪は精々3cmぐらいだが、一部は凍っていて気が抜けない。
稜線に出れば日差しで溶けているはず、ここは辛抱して北尾根を慎重に登る。
次第に雪道に
途中風の通り道なのか、冷たい風に震え上がり上着を羽織る。
稜線に出てからどうなのか、不安になる。
西峰との分岐点、左へ進路を取り眼前に大きく聳える芽室岳山頂を目指す。
肩から見上げる芽室岳山頂
心配していた風は嘘のように静か、日差しもたっぷりで快適だ。
雪の岩道を一歩一歩踏みしめ、高みを目指す。
青い空にむかって白く雪化粧した岩とハイマツの道を突き上げていく。
雪化粧した岩混じりの道を空に向かって
背後には芽室岳西峰の端正な三角錐と北日高の山並みがズラリと並んでいる。
山頂は目前、笑顔が弾む。
山頂は目前
芽室岳山頂に到着、初登頂のカミさんさすがに嬉しそう。
風もなく陽だまりで暖かい。乾いた岩に腰かけて、日高の大展望を満喫する。
全体にやや霞んでいるが、日高主稜線の山々の殆どは見えている。
惜しむらくは大雪の山並みと十勝平野が濃い霞で見えないぐらい。まずは南東に伸びる支稜線の剣山と昨日登った久山岳。
剣山と久山岳(手前)
山に善し悪しがあるわけではないが、剣山と久山岳を見比べると山にも品格はあると思わざるをえない。
剣山はメリハリがあり凄みと清々しさを兼ね備えている。
久山岳は自己主張のない優しくおとなしい表情で、控えめな品格だ。南側の日高山脈中央部に目を移す。
右にチロロ岳からルベシベ山へ走る支稜線と、左の1967m峰へ延びる主稜線
芽室岳からS 字を描くようにピパイロ岳を経て南に伸びる日高主稜線に、チロロ岳・ルベシベ山などの支稜線が合流しているのが手に取るように見えている。
右から1967m峰、ピパイロ岳、中央左に伏美岳、妙敷山
雪化粧し始めた1967m峰やピパイロ岳が目立つなか、じっと目を凝らせば幌尻岳やエサオマン、札内岳、遠くカムエクまで見えている。
主稜線から東に外れた十勝幌尻岳が大きなどっしりした姿で横たわっている。
十勝幌尻岳(中央左)
「いや〜! すっごく雄大。 気持ちいいね〜」
岩陰の陽だまりでコーヒーとドライフルーツを楽しみながら、山座同定と登った山の思い出話に時間の経つのも忘れてしまう。そしてしばらく自分だけの時間にのめり込む。
カミさんは短歌、私は写真。
夫々に思いをひねり、工夫して自分の感性を形に整えようと苦戦する。
大景観と陽だまりに機嫌も上々
目を北側に転じれば
芽室岳西峰とペンケヌーシ岳(左)など北日高の山々が並んでいる
西峰のピラミダルな端正な姿の向こうにはペンケヌーシ岳から延びる稜線上の山々が確認できる。
そして足元には雪の中にシワシワに透明感を増し真っ赤に熟れたコケモモが沢山・・・。
口に含むと渋さは全く感じられず、とても甘くて美味しい。
「動物たちに残しておかなければ・・・」と言いつつ、幸せな時間を過ごしたのでした。
完熟したコケモモ食べ放題
晩秋の芽室岳、大景観を満喫しニコニコ顔で下山にかかる。
でもそれは西峰分岐まで、凍てついた北尾根は恐怖で顔も凍りつく。
ゴムキャップを外し長く伸ばしたストックに頼り、こわごわ磨り減ったソールで降りていく。C1300m、雪の無くなる所までどうやら無事に降りてきてほっと一安心。
でも本当はその後が大変だった。湿って泥濘んだ笹の斜面、油断するとヌルリと滑る。
小屋まで1時間弱の所から、3回も連続で尻もち。
ドロドロ泥でパンツまで濡れてしまった、「気持ち悪る〜!」誰も居ない小屋で全て着替え、泥だらけのズボンやスパッツ・靴を沢で洗濯して帰宅したのでした。
もちろんパンツも・・・。
これからの季節、しっかりした登山靴に軽アイゼンを準備して行く必要がありますね。
くれぐれも甘く見たなどと言われないよう注意致しましょう。
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