ヒマラヤ紀行 Part3

 

ディンボチェ〜ゴラクシェプ〜カラパタール

 

nyプチェ

 


 

11/10(火)晴れ ディンボチェ〜ロブチェ
11/11(水)曇 ロブチェ〜ゴラクシェプ〜カラパタール
11/12(木)曇のち小雪 ゴラクシェプ〜ロブチェ

寝汗

風邪薬が効いたのか夜中には熱が出て汗をかなりかいた。
少し寒かったが起きだして、汗を拭い下着を替える。
朝、少し良くなったような気がするが、食欲は無く、咳が止まらない。

風邪ではなく、こういう症状の高山病なのではないかと疑ってしまいたくなるが、血中酸素濃度は正常範囲で、むくみ、頭痛などの症状も無い。

何とか、今日中に治ってほしい。
それには気力が一番、気合いを入れて頑張ろう。

 

荒涼とした世界

ディンボチェ(4410m)から東のチョクン方向へ少し進み、道標の従って180°向きを変えて裏手の丘を登る。
青空に雪煙を飛ばしているローツェが一段と凛々しく、アイランド・ピークも真っ白い姿を見せている。
見るだけで、風邪など吹っ飛んでしまいそうな清々しい光景である。

ローツェ
ディンボチェからのローツェ(8516m)

ひと頑張りして台地上に出ると広い荒涼とした緩やかなアップダウンが続く広々とした地形となった。

正面にはロブチェ・ピーク(6135m)、左には谷を挟んでタウチェ(6495m)とチョラツェ(6335m)が立ちふさがるように屹立し、その間の乾燥した台地を緩やかに登って行く。

振り返れば、ペリチェの村、その向こうにアマダムラム、カンテガ、タムセルクが私を見守ってくれているようだ。

ロブチェへ
6000m級の山々に囲まれながら、荒涼とした台地を行く

 

人恋し

ここまで来て気づくのは、トレッカーの数が少なくなってきている事だ。
ナムチェバザールやタンボチェ付近までは、行き交うトレッカーが列をなして歩いておりにぎやかで一人でいても物淋しさや物悲しさは感じなかった。

ディンボチェを過ぎると、前後に小さく点々とトレッカー達の姿が見えるだけ、地形と相まって荒涼たる世界が強調されるように感じるのだろうか。

列をなして歩いている時はすれ違っても無言だったのが、ここでは皆さん挨拶をし、立ち話をしている。
見方を変えれば、荒涼たる風景が人恋しさを人の心に与えているのかも知れない。

タウチェタウチェ(手前)とチョラツェ

深く広い大きな谷を挟んで、タウチェとチョラツェがだんだん大きくなって来る。
周囲の景色が凄いので余り目立たないけれど、いずれも良く見れば大変な迫力を持った山である。
特にチョラツェの東側の壁は1000m以上も垂直に切れ落ちていて、見ているだけでも怖い位だ。

 

メモリー広場

トゥクラで昼食。トゥクラと地名は付いているが、ロッジが数軒あるだけの所だ。
ここからチョラ・パスへの道が左に分かれている。

トゥクラから北側の丘への登り200mが傾斜も急できつかった。
何度も立ち止まって息を整えながら、1時間かけて登り切った。

登り切った丘の上は、一種異様な雰囲気が辺りを支配していた。
タルチョがはためくチョルテンが一つある他は、大小のケルンのような石積みがあちこちに点在している。

ヒマラヤで力尽きた数多くの登山家やシェルパ達の慰霊の地、メモリー広場になっているのだった。
私もチョルテンに手を合わせ、ご冥福をお祈りしてから、一休みさせて頂いた。

メモリー広場守りー広場

 

ロブチェ(4910m)へ

メモリー広場からはゆったりしたアップダウンを繰り返しつつ、緩やかに登って行く。
横切る小沢の水は凍ったままだ。

やがてプモリ(7165m)が端正な姿を見せ始めた。美しい山である。

プモリプモリ(7165m)

ロブチェはロッジが何軒もあるこの辺りでは大きな集落。
ヌプチェ(7864m)の真下と言うイメージである。
ヌプチェは南側からだとエベレストを遮るように幾つもの峰を並べた稜線のように見えるが、ロブチェからだと立派な一つの山塊に見える。

いよいよ、ここまで来た。
明日はカラパタールだ。
風邪も具合も良くなってきた、体調だけ気をつけて、カラパタールからの絶景を楽しみたいものだ。

 

素人天気予報が・・・

11/11朝目覚めると、抜けるような・・・と言いたかったのだが・・・。
昨日午前中、今まで見なかった上層雲が刷毛で掃いたように広がっているのを見て、ニマさんに天気が下る兆候ではないのかと尋ねたのだが、その雲は午前中に消え、気にする事も無かった。

ところが今朝はその予想が当たったかのごとく、曇り空。
ヌプチェやプモリの山頂は雲の下だが、エベレストはどうなのだろう?

通常、日本では高度7000〜8000m付近に出る雲は上層雲なのだが、見る限り中層雲のような雲が山頂付近に漂っている。
現在高度が約5000mなのだから対地高度で考えれば中層雲でも良いとは思うのだが、果たしてどうなのだろう?

いずれにしても、今日は快晴の下と言うわけにはいかないようだ。
期待のカラパタールからの展望は、今日が駄目なら明日がある。
カラパタールからが駄目なら、ゴーキョからがある。
運を天に任せて、行くしか無いか・・・。

 

ゴラクシェプ(5140m)へ

ロブチェから大きな平原に延びるトレック道をゆっくり進んで行く。
ロブチェからカラパタールを往復する人達は朝早くに出発して行った、ゴラクシェプで一泊する私はのんびりで良い。

途中やや急な登りが100mほど、ここで標高5000mを越えた。
私の自力での最高到達高度更新である。ここから先は未知の世界なのだ。

昨日、カラパタールへ登った人達が満足そうな笑顔で下って来る。
挨拶しながら「どうだった?」と聞いてみる。
「すごかったぞ!」「ファンタスティック!」「グレイト!」色々な言葉が色々な表情がその感動を如実に物語っている。
そして、「お前も頑張れ!」と声援してくれる。
「ありがとう、気をつけて下ってね!」と負けずに明るく返す。

カラパタールへ
カラパタールは近い

ヌプチェ姿が次第に男性的、先鋭的になってきて圧倒される。
右下にクーンブ氷河の流れも見えだした。
10kmも続く氷河だそうだが、大部分は土砂に覆われていて青氷はほんの一部だけ。
教えてもらわなければ、氷河と言うのも分からない位だ。

氷河の一部氷河

昼前にゴラクシェプに到着。
ロッジが数軒あるだけの所、高度は5000mを超えているが気温は思ったより暖かい。

お天気の様子を気にしながら、昼食。
所々青空がのぞいているのだが、何とか持ってほしいな〜。

 

カラパタール(5550m)

午後から取りあえずカラパタールへ登ってみる。
カラパタールはプモリから南に延びる支稜線の端、ゴラクシェプへ到達する直前の丘の一つと言う感じの場所である。

ゴラクシェプから標高差約400m、たいした傾斜でもないのだが歩き出すとすぐに息が上がって来る。
これが高度の影響なのだろう、何回も立ち止まって息を整えながら5300mまで登り大休憩。
東側の下方には、エベレスト・ベースキャンプが見えており、この日も5張りのテントが立ち並んでいた。
ニマさんによると、西稜からアタックしているパーティがあるとの事であった。

クーンブ氷河
カラパタールから南を見る。流れはクーンブ氷河

カラパタールへの後半は傾斜がやや急になり、小休止を繰り返しながらゆっくり登って行く。
ゴロゴロした石が目立つようになって間もなく、カラパタールのピークへ着いた。
15時近くしかも曇り空のせいか、私たちだけのカラパタールである。

さすがに寒い、ダウンを着込みパーカーを羽織る。
持ってきた暖かい飲み物が美味しい。

カラパタール
ヌプチェ(7864m)、エベレストはすぐ左なのだが雲に覆われている

数多くのタルチョがはためき、周囲はヒマラヤの山々に取り囲まれている。
さすがは屈指の大展望地だ。

エベレストは南壁の荒々しい姿を一部見せているだけで、雲に覆われている。
その他の山は山頂を覗かせているのに、やはり高度が高いのだ、世界一の高山なのだ。

エベレスト
エベレスト南壁

一瞬、サミットの姿が日を受けて輝いたがあっという間に雲に隠れてしまった。
それでもうごめく雲に見え隠れする南壁の迫力は凄さを通り越し、凄惨とも言える表情を見せていた。

プモリ(7165m)からリングテン(6713m)、エベレスト西稜へと続く山々が円形劇場のように周囲を取り囲んでいる。
山しか無いのに、何とも幸せな気分だ。
寒いけれども、動きたくない。

プモリ

雲の動きは速く、刻々と山々の表情は変化し続けている。
ヌプチェの鋭い山頂がエベレストが隠されているだけに、一層印象的だ。

ヌプチェ
良く見ると先鋭的なピークを持っているヌプチェ

目を南側に転ずれば、長々と横たわるクーンブ氷河の向こうには、この数日近くを歩いてきた、アマダムラム、カンテガ、タムセルクなどの山々がその存在を忘れないでと立ち並んでいる。
青空が背景であったら、どんなにか素晴らしい事か。

アマダムラム
カラパタールからのアマダムラム

カラパタールには小1時間滞在、後ろ髪を引かれる思いで降りてきた。

ゴラクシェプのロッジは、大景観を満喫したいと世界中から集まってきた人達で一杯だった。
ヤクの乾燥させた糞を燃やすストーブを囲んで、明日の晴天を期待してだろう、笑い声や明るい話し声が絶えない。

ぜひ、明日は良いお天気でありますよう。
そう思いつつ、シュラフへ潜り込んだ。



 

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