十勝岳 (1457m) (日高) 2005.9.1(木) 晴れ
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南日高の十勝岳はオムシャヌプリと楽古岳に挟まれた位置に鎮座するドッシリとした大きな山です。 昨年、野塚岳からオムシャヌプリへと歩いた時、その大きな立派な山容に魅かれ何時かはと思っていたのです。 十勝岳に登るには沢を遡るのが一般的です。 今年の8月後半は娘が小学一年の孫を連れて福岡から帰省しました。 8.31(水)の午後、自宅を出て一路楽古山荘を目指します。 |
翌朝、薄明るくなって目覚めるとすでに4時半、日が暮れるのが早くなったのは実感していましたが日の出もいつの間にか遅くなっているのですね。
早速、沢装備に身を固めて歩き出します。
朝食代わりのあんパンを頬張りつつ歩く林道はまだ薄暗く余り気持の良いものでは無く、笛を吹き鳴らしながら進んで行きました。
コイボクシュメナシュンベツ川には適度に巻き道が付けられていました。
これを利用しながら約一時間で南面直登沢の出合です。
南面直登沢出合 |
ここで間違えたら大変です、念のため地図で確認です。
地形も合っている、高度も530m、間違いありません。
出合のコイボクシュメナシュンベツ川 |
南面直登沢は水量もかなりあり、荒々しい感じです。
小さな函状の所には鹿道を利用した巻き道が付けられていました。
しばらく遡ると、大きなガレ場が現れました。
岩屑が堆積したガレ場では沢水は伏流となって下を流れています。
ゴォ〜ゴォ〜!とまるでジェット機が足下で飛んでいるかのようです。
ガレ場、水は伏流となっている |
ガレ場を過ぎ、標高840mで沢は右に曲って行きます。
曲り切ると、そこから遡る滝やその先の稜線出合までがスッキリと見通せました。
「ヨ〜シ」と否が応でもファイトがわき出してきます。
遠くに滝も見え出し、稜線へのルートも見える |
沢の両側は広く開けたV字型の谷になっていて、草や潅木の緑の中に荒々しい岩肌が点在しており何とも感じの良い雰囲気を湛えています。
南に面しているだけに陽射しを受けて明るく陰湿では無いのも嬉しい限りです。
いよいよこの沢の核心部である滝が連続する部分にさし掛かりました。
滝が連続する核心部に入る |
気持を引き締め滝を眺めながら登るルートを考えます。
最初の高さ15〜20m程の滝は左岸沿いを水の飛沫を浴びながら慎重に登り切りました。
左岸沿いを登った |
登る時には気が付かなかったのですが、下り時に右岸に巻き道が付けられているのを見つけました。
次に三つ続く滝も左岸を直登して登りました。
美しい苔が付いていて、踏むのも気がとがめる感じでした。
足場はどれもしっかりしていて、これなら下りもロープを出さなくても大丈夫だと感じました。
これを越えれば大きな滝は無い |
核心部を通過すると標高1040mの二股です。
私はここを右にとり稜線のコルを目指します。左を採っても山頂の南西側に出るそうです。
やがて源頭となり、コルまで笹原の急斜面をかすかな踏み跡と言うか鹿道を利用して登って行きます。
笹を頼りに掴んで両手両足総動員の登りです。沢靴が滑り何度もずり落ちそうになりながら、コル目指して頑張りどころです。
やっと稜線に到達しました。
振り返る位置に楽古岳が悠然と端座しています。
稜線から見る楽古岳 |
ここまで来れば山頂まで後僅かだと思いますが、源頭からの急斜面を頑張った御褒美にトマトとゼリーで一休みです。
ここからは稜線上をハイマツを漕ぎながら山頂を目指します。
ハイマツは膝ぐらいで然程気になりませんが、一部は背丈ほどありました。
奇麗に整地されたテンバを過ぎると、三角点と枝に赤テープが付けられた十勝岳山頂でした。
天気は晴れているのですが、全体に白っぽく霞んでいて大展望と言う訳には行かないようです。
手前からオムシャヌプリ、野塚岳、トヨニ岳と続く主稜線の山々 |
それでも北側にはオムシャヌプリから野塚岳、トヨニ岳、神威岳、ペテガリと続く主稜線の山々が、かすかに1839峰までが見えていました。
楽古岳、広尾岳などの南の展望 |
南側には楽古岳が広尾岳を従えるように屹立していました。
さらに南西方向にはアポイ岳、吉田岳、ピンネシリが独特な姿を見せていました。
まだ時間は0930です。お昼に持ってきたオハギを食べながらのんびり至福の一時を過します。
オムシャヌプリから十勝岳に延びる稜線 |
楽古岳や野塚岳・オムシャヌプリ、神威岳、ペテガリなどをのんびり眺めていると、それぞれを訪ねた時の思いが甦ってくるようで、しばし一人思いに浸っていました。
約一時間、山頂でゆっくりして下山です。
コルから源頭までは笹の急斜面、笹を掴みながらですがそれでも何度か滑って転びました。
十勝岳に付けられた踏み跡は鹿道を利用しているようで、薄い踏み跡が幾つも付いています。基本的には沢に降りて行けば良いのだと適当に笹原を滑り降りました。
源頭部からガレ場までの核心部は慎重の上にも慎重に降りてきました。
疲れが出てきて、注意が散漫になりそうなのを自身で叱咤しながらの下降です。
それでも足を踏み外したり、滑らせたりで沢水で身体を洗う羽目になりました。
南日高の十勝岳は余りメジャーな山ではないと思います。
その通り、道を示すテープなどもほとんど無い、手付かずの山の中を自分の判断と能力だけで登る緊張感溢れる楽しさを体験する事が出来ました。
チョッピリ自信のようなものが湧き出してきたようにも感じます。
これからも慎重さと謙虚さを忘れず、少しづつこのような山にも挑戦して行きたいと思いました。