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恵庭岳
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千歳市から支笏湖へ通じる支笏湖道路は、今の時期木々が美しく色づき、芽吹きの時期と共に多くの人で賑わう。
これらの季節は新緑や紅葉ばかりでなく、山菜やキノコと言う実益まで付いてくるのだから堪らないのである。恵庭岳登山口は平日の為かひっそりしている。
入山届けを見ても以前より少ないような感じ、やはり山頂部の立ち入り禁止と風倒木による歩きにくさが影響しているのかも知れない。
登山口付近の紅葉
歩き出すと紅葉に囲まれた明るく美しい雰囲気、気持ちも和む。
そしてお砂糖を焦がしたような、メープルシロップのような甘い香りが強く漂っている。
桂の木から漂う、秋の香り・山の香りである。
2〜3.5合目にかけて台風による風倒木が凄かった記憶がある。
重なり合うように積み重なった木々、その上に乗り枝渡りするようにバランスを取りながら進まねばならず、とても苦労した。
しかし今回訪れてみると、風倒木は概ね片付けられ登山道は元通りとなり歩き易くなっていた。
多くの方々による大変なご苦労があったのだと思う、有り難いことだ。
風倒木も概ね片付けられた
4合目付近から深い樹林帯の中の登り、大きく小さくジグを切りつつ結構な登りだ。
真面目な登りが続く
歩き出して約1時間で5合目、ゆっくり歩いているつもりだが斜度もあり汗でびっしょりだ。
眼鏡に汗が落ち、曇って良く見えなくなる。たまらず一息、冷たい水が美味しい。6合目を過ぎると記憶も新たな長いロープ場、登り用と下り用に別れて道がつけられている。
長く続くロープ場の一部
時折ロープのお世話になりつつ、ここを乗り越えれば、間もなく第一展望台の7合目である。
岩場の展望台は硫黄の匂いが漂う巨大な爆裂火口の渕、支笏湖や恵庭岳山頂部が出迎えてくれる。
第一展望台からの支笏湖
空は晴れているようだが薄雲が広がり、やや霞がかかっている。
鈍い光が湖面に反射し、静かで物憂げな情景が広がり寝転びたくなる風情である。
イチャンコッペ山と紋別岳
イチャンコッペ山から紋別岳へ続くカルデラ壁も急峻さが押さえられ、穏やかに見える。
恵庭岳山頂岩峰
そして見上げれば火口の中の紅葉のさらに上に山頂岩峰が立っている。
2003年に一部が崩壊して、心なし痩せたようにも見える岩峰である。この第一展望台から爆裂火口の渕を登り、山頂岩峰を回り込みながら岩を攀じ山頂へと立つのが、私にとっての恵庭岳登山の醍醐味であったのだが、残念ながら立ち入り禁止の今は望むべくも無い。
9合目近くの第二展望台へ行く途中、葉の落ちた木々の間からオコタンペ湖が見える。
山頂からは漁岳を背景にその全景が見られた筈だが、ここからは一部だけだ。
オコタンペ湖
第二展望台に到着、ここからは立ち入り禁止となっていて実質的な山頂である。
山頂から降ろされた山頂標識が掲げられている。
山頂標識
仕方なく岩に腰を下ろし、山頂の岩峰を見上げる。
近いだけあってなかなかの迫力である。
山頂岩峰
十勝沖地震の直後には崩れた場所が赤茶けていかにも脆く危なく見えたが、今は落ち着いているようにも見える。
立ち入り禁止の看板には「岩が崩壊して道が無くなっている」とあったがどうなのだろうか?
風不死岳と樽前山
風不死岳と樽前山が重なるように見えている。
湖は火口壁に遮られ微かに一部が見えるだけだ、山頂からは全てが見えていた筈だが・・・。
山頂岩峰をバックに
岩が崩落した十勝沖地震の直後は、さらに落ちそうだとかひびが入っている等の情報があったが、この数年はそんな話も噂も耳にしない。
立ち入り禁止にしておけば万一の場合にも責任追及されないと考え、関係機関が「羹に懲りて膾を吹く」保身状態になってはいないだろうか?
爆裂火口越しにみる支笏湖北側
登山という遊びは元々自己責任の世界。
状況を正しく知らしめて後は登山者各自の判断で、と言う訳にはいかないのだろうか?と思うのは私だけなのかな・・・。
空沼岳、狭薄岳など札幌方向
大部分の登山者達は危険回避に関しては正しい判断をする筈だ。
それを信じて多くの登山者達が楽しめる山にして欲しいと強く思う。
時には無謀で阿呆な登山者もいるが、そんな例外を主対象に考えても仕方がないのだ。
オコタンペ湖
恵庭岳の偽山頂でそんなことを考え、山頂岩峰からの眺めはどんなだったか消えかけている記憶を辿っている内にあっという間に時間は過ぎて行った。
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