ヒダカハナシノブ
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ピセナイ山
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花の山となれば必ず一緒に行く花好きのカミさん、椎間板ヘルニアが急に悪化し腰や足の痛みとしびれで山どころではなくなってしまった。
可哀想だが今は安静にしているより他は無い、写真を一杯お土産にもって帰るからと早朝4時過ぎに家を出た。
すでに空は明るく雲一つない晴天、日高の大展望がまぶたに浮かぶ。所が・・・である。
日高町に入る頃から霧が掛かり始めた。
街道沿いの牧場では馬の親子が寄り添って草を食んでいるのが影絵のようだ。
静内キャンプ場のゲートはしっかり鍵がかかっている、仕方ないここから歩きだ。
登山口まで約1時間半、花達と会話をしながら歩いて行こう。歩き出してすぐに右手に小さな滝が現れる、小さいながらも姿の良い滝である。
良く見るとピンクや薄い赤紫の小さな花が、ソラチコザクラだ。
小さな滝
前回訪れた時はもっと沢山群れて咲き誇っていたのに、今年はずいぶん数が少ない。
環境が変わってしまったのだろうか?
それとも岩盤の崩壊防止工事の影響だろうか?
ぜひ生き残って、いつまでも私たちの目を楽しませてもらいたいものだ。
岩場に咲くソラチコザクラ
静内湖が緑の湖面を見せ背後の山の新緑が美しい。
霧は少し上がって低い雲になりつつある、早くスカッと晴れて欲しい。
新緑の静内湖
テクテク歩きながらソラチコザクラを楽しむ、車で通過しては気がつかない、目に留まらない、歩きならではの特権である。
ソラチコザクラ
長い沢沿いの林道をのんびり歩く。
道の両側にはニリンソウの可憐な白い花が咲き競っている、ピンク色が再び眼を惹くようになった。
エゾオオサクラソウである。
10cmと小さかったソラチコザクラと比べると30cm以上はあり大きく見栄えも良い。
エゾオオサクラソウ
また沢には苔むした倒木が至る所に見られ、シットリした気配が周囲を漂っている。
しっとり苔むした表情
ピセナイ山の登山口へ着いた。
周囲はまだ低い雲に覆われどんよりしている、天気予報は道内どこも晴天だ、太陽が照りつければ急速に解消するに違いないと登山道へ踏み込んだ。ピセナイ山は、取り付きから2合目、4合目〜6合目まで、かなりの急坂で汗をしぼられる。
その坂道にエゾオオサクラソウが点々と花をつけて登山者を励ましてくれる。有り難い存在だ。
登山道には点々とサクラソウが
3合目を過ぎた頃から雲の中に入り視界が閉ざされた。
オオカメノキの花が霧と同化したように白くかすんでいる。淡々と急坂を登る、霧のせいで暑くもなく、呼吸も楽だ。
でも暑くても、息が苦しくても、晴れて欲しい。ひたすらそう思いつつ足を運ぶ。6合目で稜線に出るが状況は全く変わらず一面、白一色の世界。
5月中旬頃までは雪の残る稜線も、さすが5月下旬で雪は溶けている。
そうこうしている間に山頂へ、いつもなら大歓声が響く山頂も今日はため息だけの静かなものであった。
一面の乳白色、見えるものと言えば・・・
ああっ〜・・・! 出るはため息ばかりなり・・・。
こうなったら、天気予報を信じて、晴れるのを信じて、待つばかり。
まだ10時、霧が負けるか私が負けるか、持久戦、根比べだ。しばらくするとさすがに寒くなって来た。
パーカーを羽織り、ツェルトを被って座り込み空を睨む。
一面乳白色の山頂にて
11時、少し霧が動き始めた。
11時半、南西方向の牧場地帯が見え始め、晴れてくるのではと期待が高まる。
12時、時折青空が覗きだすが、雲底は低く望み薄の気配。日高主稜線の山々の麓が見えだす。
本来であれば、この雲の向こうに主稜線の山々の勇姿が立ち並ぶのだが・・・
12時半、雲は一進一退、好転の気配さらさら無し。ついに諦める!
とうとう根負けしてしまった。
何度もピセナイ山には来ているけれど、こんな事は初めてだ。
天気を見計らって来たのに、残念至極、ああ無情。まあ、これまでが幸運すぎたのかも知れない。
山の神様に「余り調子の乗るな。ちょっぴりお灸を据えてやる。」と叱られたのかも知れないな。そんな思いでザックを背負い、スゴスゴと引き返す。
所々に咲いているキンロバイやオオカメノキがそんな私を慰めてくれているような感じがした。
キンロバイ
「ありがとう! また来るから今度は機嫌良く迎えてね。」
オオカメノキ
登山口へと戻り、長い林道を意気消沈しながら歩く。
そんな気分を明るくさせてくれたのは、ヒダカハナシノブの花であった。
蜂にも私にも元気をくれた、ヒダカハナシノブ
いつまでもしょんぼりしても始まらない。
明日はアポイ岳の花が機嫌良く迎えてくれる筈。一路、様似町のアポイ山荘へ。
温かなお風呂に入り、ぐっすり休んで元気を出すぞ〜!
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