幻のように雲間から姿を見せた、徳舜瞥山
|
ホロホロ山
|
春は閉じ込められていた冬の反動か、気持ちが弾み何をやっても楽しいのだが山歩きにとっては春霞で景観が楽しめないのが唯一残念な点である。
それを回避するには雨や雪の翌日に登ることしか無い。
4/18(月)は前日にかなりの雨と雪が降り、しかも天気は上々の予報である。車を走らせていくと、支笏湖や樽前山・風不死岳は晴れてすっきりした姿を見せているが、それより北と西は雲に覆われている。
これまで何回も同様な経験をしていて良い結果になったことは少ない、ちょっと嫌な気がするが予報を信じて登山口である大滝の工芸館を目指す。
平日でまだ誰も居ない工芸館の駐車場で準備を整え歩き出す。
昨日降った新雪の上にウサギの足跡が幾つも残っている幅広い尾根をのんびり登っていく。尾根の幅が狭まり斜度が急になるC700m位から雲の中に入り視界が利かなくなる。
気温が低いのか木々の枝や葉に小さな霧氷が出来始めている。
もう樹氷は見られないが、そのかわりダケカンバの巨木の幹から1m程のエゾマツが育っているのを見つけた。
昨年フレ岳付近でも見かけたことがあるけれど、珍しいものではなかろうか?
ダケカンバの幹に根付いたエゾマツの幼木
C1000m位から狭くなっていた尾根は再び広くなり、小さなダケカンバとハイマツが点々とする大きな雪原になる。
雲の中で視界は50〜100mほど、GPSでC'Kすると概ね正しいルートを辿っているが感覚的には何処だか皆目わからない。
登りは高い方へと登っていけばさして問題ないが、下りは何処が何処だか疑心暗鬼に陥る場所だ。
甘く見てピンクテープも持ってこなかった、コンパスを頻繁にC'Kして真南へ進路を取る。
視界のない雲の中、時折雪も降ってきた。
薄暗い大雪原の中、テンションは上がらない。ただ高みへと足を進めるだけだ。だが時折、太陽の輪郭が雲を通じて見えるようになってきた。
「太陽、頑張れ!」心のなかで精一杯の声援を贈る。
しばらくすると、願いが届いたのか薄日が射し込んできた。
日差しが差し込み、雲に透けて青空も・・・
「晴れてくるかも知れない!」気持ちが高ぶり足にも力が入る。
振り返ると、支笏湖や恵庭岳が見え始めている。「嬉しい〜!」
C1100m付近から恵庭岳と支笏湖
雲の流れは早く、視界がひらけたと思うと次の瞬間には再び雲の中。
それでも数分に一度は雲が流れ視界も開けてきた。
C1280mの肩も目の前だ。
C1280mの肩も目前
C1280mのホロホロ山の肩から山頂までは狭く切り立った凍った岩の稜線である。
東側はすっぱり切れ落ち、西側はダケカンバとハイマツが密生する急斜面。
冬のホロホロ山登山の核心部と言って良い所だ。まさにホロホロ山の肩に着いたとき、立ちはだかっていた雲が切れその岩の稜線が姿を見せた。
C1280m肩から続く稜線
ホロホロ山の山頂がはっきり見えている。
稜線上には昨日のものであろうか、足あとが付いていた。
僅かな距離だが、慎重に岩の稜線を渡り始める。
幸い、昨日の雪が適度に積もり氷のガリガリ斜面ではないのが有り難い。稜線を半分ほど渡った時である、突然徳舜瞥山方向の雲が切れた。
「うあ〜! 素晴らしい!」
姿を見せた、徳舜瞥山
これまですべてを覆い隠していた灰色の雲の塊の中から徳舜瞥山が幻となって飛び出してきたような感じがした。
次の雲の塊が直ぐ傍に迫っている、カメラを取り出すのももどかしい。
夢中になってシャッターをきる。
その後、数分置きにこんな情景が繰り返されるようになった。
足元は慎重に、眼と心はキョロキョロ、全く気忙しい。
岩尾根からホロホロ山山頂
山頂に立った、冬のホロホロ山山頂は実に6年ぶりである。
登る途中では、山頂に立つだけで期待してきた凛々しくも荘厳な冬の徳舜瞥山の姿を見るのは無理だと諦めかけていただけに、雲の合間からの景観だけでも嬉しい限りだ。雲が多く全体をはっきり見るのは難しいが、かえってそれが風情を醸し出しているような気がする。
雲の隙間から浮き出てきたような感じさえ受ける雲が景観を引き締めている、そんな感じさえするのである。
ホロホロ山山頂からの徳舜瞥山
支笏湖とホロホロ山を結ぶ線から南は晴れていて、雲もその領域に入ると消えていく。
北側は雲の塊で埋まっていて次々に風に流れ押し寄せてくる。
いつもは直ぐ近くに大きく見える羊蹄山も姿を見ることは出来ない。
支笏湖や樽前山はしっかり見えているのだが、恵庭岳は見えたり隠れたりだ。
恵庭岳
山頂は幸い風も弱くさして寒くない。
それでもパーカーを羽織り、熱いコーヒーで体を温め寛ぐ。
オロフレ山が来馬山と共にたおやかに佇んでいる。
オロフレ山
次第に雲に覆われている時間が長くなってきた。
じっと耐えながら待つが、待っている時間は寒くただただ長い。
そして雲が切れると喜び・幸せを感じる、その時間はあっという間の短さだ。
C1280mの肩へ続く稜線が雲に隠れそうになっている。
ありふれた表情が今まで見たことがないような厳しい表情に変わっていく。なかなか良い感じである。
C1280m肩へ続く稜線
1時間以上、ひたすら雲の切れるのを待ち続けた。
この冬の山頂での滞在時間の最長記録ではなかろうか?
いささか寒くなってきた、記念写真でもとって下山にしよう。
記念写真、真ん中に入れた筈の徳舜瞥山が・・・
岩の稜線を慎重に渡り返しC1280m肩へ戻る。
ここでホロホロ山の山頂とはお別れだ。
ホロホロ山山頂に続く稜線、左はC1260m峰
肩から広がる大雪原は登りとは打って変わって視界も良好、何の不安もなく降りていく。
白老三山の姿も美しい。
白老三山(左)、右に樽前山と風不死岳
登ってきた尾根に入り下って行くに従って再び空は曇りだし、登山口の工芸館に着いたときは今にも降り出しそうな本曇りになっていた。
山頂付近に居た時だけでも雲が切れ、幻想的な雰囲気の景観を堪能できたことを感謝したい。
そんな意味でも、満足のホロホロ山山行であった。
東日本大震災から1ヶ月が経った。
未だ行方不明者の捜索すら難航し、復興の道筋は見えない。
原発による被害は大きくなるばかりである。それなのに国会では速やかに復興の手はずを決め、被災した方々に安心と元気を与えなければならないのに、党利党略・揚げ足取りばかりに終始している体たらくだ。
地方での統一地方選でも、被災地の現状に関係なく自分の名前を連呼するだけの私利私欲・馬鹿ばかり。
この国に未来はあるのだろうかと本気で心配になる。国民一人一人が、自分達の手で復興を働きかけていくしか無いのではないか。
被災者の皆さんと同じぐらいの痛みを感じて支援し続けることが求められているのだと思い、一山遊ぶごとに3000円の義援金を拠出することにして今回で5山目。きっと送り続けますから、ぜひ元気を出して立ち直りましょう。